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2008年11月 5日 (水)

休日の過ごし方


本日水曜日は定休日でございます。

皆様それぞれに「休日の過ごされ方」はいろいろでしょうが、

私の場合は週休一日ですので、あえて予定を入れずになるべく気ままに過ごせるように致しております。

と申しましても、商売を致しておりますと休日といえど所用がございます。

本日は1件打ち合わせがあり、あとは予定なし。

何軒か食器店、雑貨店、書店、生花店を覘いて、その後は家でネコ達の世話をして過ごしておりました。

肌寒くなって参りましたので、茶トラのサクラが膝にしきりに乗りたがって、こうしてパソコン仕事をしております時には困ります。

「はいはい、わかりました!ちょっとまってね。」


2008年11月 4日 (火)

料理屋のしごと


七月の或る日の夕刻。

ご家族連れの三名様がテーブルのお席にお座りになりました。

私と同年くらいのお父様とお母様、それと13才くらいのお嬢様のお三人。

私が担当させて頂いておりましたが、ご注文の頃から何か「不自然さ」を、感じておりました。

どうやらお母様が夜分にも係わらずお帽子をお取りにならずにいらっしゃるのが「そう感じる」原因だと解釈いたしておりました。

何事もなくお食事をすまされ、和やかにお帰りになる運びとなり、ご主人様とお嬢様が先に表にお出になり、奥様がお会計の為にレジにお立ちになりました。

「ありがとうございました、お食事はご満足頂けましたでしょうか?」

「ええ、とても美味しく頂戴いたしました。ごちそうさまでした。」

「それはよろしかったです。お口に合いまして何よりです。」

「じつは、こうして『魚棚』さんに寄せて頂くのは二年ぶりなんです。私が病気をしまして・・・それまでは毎年、一度京都に来た時には『魚棚』さんに寄せて頂いていたのですが。」

「そうですか・・・」

「こうして今年二年ぶりに来れました。」

「それは、憶えて頂いていて、ありがとうございます。」

「また、来年も来たいと思うのですが、来れるかどうか・・・」

「そんな事おっしゃらずに是非ご来店くださいませ。お待ちして居りますので。」

「それが・・・、わたしが乳癌で・・・、それで来年は、来られるかどうか分からないのです。」

「・・・」

「今日は久しぶりに『魚棚』さんに来ることが出来て本当に嬉しかったです。ありがとうございました。」

と、お出になる後ろ姿に「あっ、ちょっとお待ち下さいますか。」

「これは私ども『魚棚』でお昼に使用しております『お箸置き』でございます。南天の木で拵えておりますので『難を転ずる』の意味もございます。毎日お使い頂きましたらきっと来年もお越し頂けるると思います。どうぞ詰まらない物ですがお持ち帰りください。是非、来年もお越し下さるのを心からお待ち致して居ります。」

いち料理屋の支配人の私に出来る精一杯の気持ちをお渡ししたつもりでした。

後ろ姿をお見送りしながら、図らずもお聞きしたお客様のお話に「悲しさ」と「切なさ」と、お越し頂けた「嬉しさ」とで、どうして善いか分からず、しばし途方に暮れておりました。

新京極の角をお曲がりになって、お姿が見えなくなるまでお見送りして、店内にもどり、お席の片付けをしようとふと椅子を見ると、書店の袋のお忘れ物がありました。

とっさに、袋を持って表に飛び出し、着物姿で新京極の角まで小走りで後を追いかけ角を曲がったその時、立ち止まりました。

その場でご夫妻向き合って奥様は泣いていらっしゃったのです。

お嬢様は少し離れたところからご覧になっておりました。


あっ・・・見てはいけないところを見てしまった・・・

と。

お忘れ物を差し出し、無言のままお渡しするだけが精一杯でした。

あれから4ヶ月。

短くはない時間、この仕事を続けて来て初めて考えさせられました。

常々「料理屋とはお客様に空腹を満たして頂くだけの場所ではない。」と、スタッフには話し、自身にも言い聞かせて参りましたが、今回ほど考えさせられた事はありませんでした。

きっと「機が熟して」神様が巡り合わせて下さったのでしょう。

この出来事を自分だけではなく多くの方に知らせる事が、飲食という仕事に従事するたくさんの人たちに知って頂いて、自分たちが何をしているのか、どんな「心づもり」をして仕事をするべきなのかと云う事を考え直して頂くきっかけになればと願っております。

ブログを書き始めまして間も無く「この出来事」がございました。

「この出来事」が心の歩みを止めたまま、あの日に立ち止まったまま、あの日、新京極の角を曲がったその場所で立ち止まったまま、私は今日まで居ります。

そして、今日、こうして「魚棚のブログ」が書けて居ります。

今、確実に申せます事はひとつだけ。

ご病気のお客様が、どうぞ回復され、お元気になって来年もお顔を見せてくださる事。

ただそれだけでございます。

「料理屋の仕事」。

それについてはこれからもずっとずっと、考えてゆきたいと思っております。


2008年7月 1日 (火)

伊佐木(いさき)の炙り造りの美味しさは

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 いすずくれつき(彌涼暮月) かぜまちづき(風待月) 

 すずくれつき(涼暮月) せみのはつき(蝉羽月)

 まつかぜつき(松風月) なるかみつき(鳴神月)(鳴雷月)
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七月一日

旧暦では、ひと月遅れなので、今であれば今日は六月。

いにしえの人々が呼んでいた月の名前は、やはり蒸し暑かったせいか字面を見るだに涼しげな言葉が並んでおり、現代人にはない、「日本人」の洗練された「美意識」に改めて驚かされます。

この言葉達のここち好い響きは、祈りの言葉にも似て、今まさに、そよ風が吹いて来るようにも思われ、「いまのひと」に足りていない想像力や、気持ちの豊かさを思い知らされます。


それとは別に、今月の魚棚の献立に「伊佐木(いさき)」がございます。

六月、七月が最も美味しい旬の魚です。

古代、「いさ」は磯を「き」は魚をあらわすそうで、なんだかネイティブアメリカンのことばの様にも思われます。

いにしえのことば達が持っている「音」の素朴な「風情」や、強い「パワー」を初めて意識いたしました。

そんなこころの在り様に負けない「つろくする」美味しさを感じて頂きたいと松浦料理長が御献立致しました「伊佐木の炙り造り」。

ほど良く弾力のある肉質に皮目を焦がした奥行きのある風味、それだけなら他のお店にも有り得ると思いますが、「魚棚」では季節限定、この時期の完熟した、やわらかな酸味の酢橘(すだち)の果汁と、伊豆大島の海塩にて召し上がって頂いております。

旬の時期ならではの、伊佐木の造り身を「炙り」に調理致しました、「真の醍醐味」を、お一人でも多くの方に是非一度味わって頂きたいと毎日願っております。


※「つろくする」とは京都弁で「釣合いがとれる」こと。「この着物にこの帯はつろくせえへんしなぁ。」と言うたりします。へぇおおきに。


 

2008年6月30日 (月)

店内のオブジェたち

「魚棚」の壁面にディスプレイしております「石」のオブジェたち。

ふしぎな「写真の石」たち。

京都市芸大を卒業されて、欧米、アジアでも評価の高い若手女流アーティスト木村友紀さんの作品です。

ありきたりな板張りの壁面を、ものの見事に哲学的な景観に変えてしまう、この「瞬間芸」のような作品は、木村さんの芸術の真骨頂のように思えます。

それぞれ建仁寺さん、清水寺辺り、鴨川上流など京都市内のあちらこちらの石の中から、彼女の感性が捉えた「石」たちばかり。

なにより、絶妙なバランスで配置された「石」たちは白砂に鎮座した禅寺の枯山水を彷彿とさせますが、それ以上に「写真」という素材のユニークさを改めて感じさせてくれます。

なかには相当な大きさの物もあるらしく、松材の壁面に存在するさまは、本来ある重力を忘れて浮遊しているようにも見えます。

“重い”けれど“軽い”。“軽い”けど“重い”は人生でも非常に深みのある「題材」だと考えております。

お茶の御稽古でも「重き物は軽き様に、軽き物は重きが如く」扱うように教えられます。

永い間培われてきた「非常な知慧」に思えます。

その「智慧」を、洒脱にさり気なく提示される感性は京都生まれ京都育ちの彼女のプライドでもあると信じます。

なにより、「折角なら、もっとアート性を感じさせてくれるインパクトの強い作品を!」との私からのリクエストに「お食事されるとこやし、あんまりシンドイのも良う無いと思うし・・・こんなんでええと思いますぅ。」とおっしゃった真意。

「控えめに観たらサラッと見のがせるけれど、性根で観たら奥が深いえぇ。」と。

料理も文学もアートも何でも、それで良いのではないでしょうか?

あじわう方の「感受性」で全評価が違う。

人生はまさに、そんな感じです。

「良い芸術」とはすなわち「人生」を感じさせてくれるものだと私なりに常々定義しております。



2008年6月29日 (日)

美しいものたち

六月に相応しい花材に出会えました。

何百回とお花屋さんに足を運んでも、毎回出会える花たちとはそれぞれの「縁」を感じます。

濃いフクシア色のハイドランジア(洋種紫陽花)とアーティーチョーク。

ご存知アーティチョークは食用の西洋アザミ。

茹でてつぼみのがくの部分を前歯でしごいて中の柔らかい所を食します。

こんなに大きく綺麗に咲いているものはめずらしいく、久しぶりに銀色の大きなベースに入れました。

脇役の枝物は夏櫨(なつはぜ)小さな葡萄色の実が成っており、これも食用になります。

入れ終えてじっくり観ておりますと、いつも花たちは「ひと」に見えて参ります。

これは成熟した女性。それでいて気品のある。幼さの残り香も少し。

コレットの小説に出てくるような・・・

一日一日とおなじ表情の「時」はありません。

儚いゆえに「うつくしい」ものたち。

極上の料理も含めてそんなものたちに慈しみを感じます。

2008年6月28日 (土)

鱧(はも)の良し悪し。


京の「夏の風物」に「鱧(はも)」がございます。

現在、魚棚で仕入れておりますのは徳島産の「活け鱧」です。

あちこちで水揚げされますが、国産では徳島産が最上とされております。

「活け鱧」と申しますのは、生きた鱧のことでございます。

すぐ近く、京の台所「錦小路」の魚屋さんから、魚棚に来る直前に活け〆にされて参ります。

到着すると一秒を惜しんでまず水洗い。

皮表面のヌメリをタワシで良く擦り、流しっぱなしの井戸水で、勢い良く洗い流します。

きれいさっぱりヌメリが取れたら、これまた寸分を惜しんで腹から尾にかけて一気に開き、内臓、卵、肝などを取り除き、頭と中骨を目にも留まらぬ早業で身から放ちます。

この間はほんの5~6分。

ここまで急ぎで作業を進めるのは、せっかくの「活け鱧」の鮮度を落とさないため。

これからが「鱧の骨切り」と言われる工程でございます。

まず、鱧の開き身が骨切り中に動かない様に皮目をピタッと俎板に密着させます。

今まさに骨切りされようとしている、開いた「活け鱧」の美しさと言いましたら、暗い洞窟から出された「初めて日の光を浴びた水晶」のように透き通って艶のあるそれでいて、うっすらとべっ甲色を帯びた肉質が、信じられないことに、こまかくケイレンしているのです。

良く切れる包丁で開いた白身魚の切り身特有の、かすかに縮れた表面が、いつ止まるともなく細かなさざ波のように繊細に繊細にケイレンしているのです。

みなさまにも、ご覧頂きたいのですが、とうてい動画では捕らえらません。

はじめて目に致しました時は鳥肌が立ちました。

まさに「命のある食材の美」です。

こんな内容の話、どこのお料理屋さんでもしてはらへんと思います。

ぜひ一度、魚棚の「鱧の落とし」を、お召し上がりにお越しくださいませ。

今までの「鱧の落とし」とは一味ちがう真実がございます。


2008年6月27日 (金)

本日のお客様。

今日のお昼に素敵なお客様お二人がご来店になりました。

おしゃれな輸入キッチン用品の販売をされてるお客様です。

いつもセンスの良い商品を提案してくださって安心してお店に伺うことができます。

長年、接客のお仕事をされていらっしゃいますので、さすがに「人との距離」を、とても熟知されており、お話させていただいていても、毎回あっと言う間に時間が過ぎてしまいます。

これは、わたくしたち飲食のサービスの中では稀な機会です。

常にわたくしたちサービス業に従事する者は、「癒すことで癒される」側面がございます。

そういう意味からも、希少な有り難いお客様です。

2008年6月26日 (木)

お客様との距離について

 私自身が例えばタクシーに乗車したとき、思いがけず運転手の方に話し掛けられて戸惑う事もございます。

むろん運転手の方はサービスとしてお話ししてくださっているのですが、こちらが考え事に気を取られていたり、気分が乗らない時は負担に感じます。

お店でも同じ事が言えるのではないでしょうか?

「その場の空気を読む」。

接客では一番大切な事。

それにはいろいろな価値観の方がいらっしゃるのを知る事と、実践での経験が必要になります。

ほんとうに何年やっておりましてもムツカシサを感じます。

ゆえに、自分がサービスを受ける場合は、ちょっとお店の方に気を遣うようにしております。

席に案内される途中や、おしぼりが運ばれてきた時に、まず自分から「梅雨時なのに、今日は思いがけなく涼しいですね!」のひと言とニコッと笑顔を見せるだけで、お店のスタッフの方もリラックスしてくださって、良いサービスが受けられるものです。

やはり、私たちも「人間」ですから。

心配りのあるお客様には良いサービスして差し上げたいと感じます。

そして、美味しいお料理も召し上がって頂きたいと・・・

2008年6月25日 (水)

はじめてのブログ。

日々、お客様のお世話をさせて頂くなかで、心をよぎる「よしなし事」を、綴らせて頂こうと考えております。どうぞお付き合いくださいませ。

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